すみだゆかりの人物を紹介します(堀辰雄、永井荷風)

掲載日
2020年9月1日

墨田区で生まれた、育った、暮らしたなど、すみだにゆかりのある人物を紹介します。

堀 辰雄

堀辰雄 肖像写真

画像は、「昭和6年 向島小梅の書斎にて」(堀辰雄文学記念館提供)
生年月日:明治37年(1904)12月28日
没年月日:昭和28年(1953) 5月28日
職業:小説家

プロフィール

 堀家の嫡男として生父・堀浜之助のもと、麹町区麹町平河町(現・千代田区平河町)に生まれる。2歳のとき、生母・志気とともに堀家を出て向島小梅町(現・向島三丁目)に転居、2年後に志気は彫金師・上條松吉と結婚した。
 大正6年(1917)府立第三中学校(現在の都立両国高校)に入学、同10年(1921)第一高等学校理科乙類に進学。学寮で知り合った神西清(じんざいきよし)から影響を受け、文学に目覚める。同12年(1923)の関東大震災で隅田川を泳いで避難したことや母を亡くしたショックにより胸を病む。同14年(1925)東京帝国大学文学部国文科に入学。昭和4年(1929)に卒業論文『芥川龍之介論』を書き、卒業。軽井沢での療養を機に、軽井沢を舞台とした作品を書くようになる。同6年(1931)『時事新報』に『本所』を連載。軽井沢で出会った矢野綾子と婚約するも、綾子は昭和10年(1935)に死去。その翌年に綾子をモデルとした小説『風立ちぬ』を発表した。昭和13年(1938)に加藤多恵と結婚。病をかかえながらも、詩人の室生犀星や文学の師と仰ぐ芥川龍之介らをはじめ、中野重治や窪川鶴次郎、小林秀雄や永井龍男ら、多くの文人と交流しながら小説を発表した。
 主な作品として『ルウベンスの偽画』、『聖家族』、『美しい村』、『風立ちぬ』、『菜穂子』などがあり、『菜穂子』は中央公論社文芸賞を受賞、『堀辰雄作品集』毎日出版文化賞を受賞した。

墨田区とのかかわり

 辰雄が2歳のときに、母・志気は自身の妹を頼って向島小梅町(現・向島三丁目)に身を寄せ、翌年には、「土手下の、水戸さまの裏」(『花を持てる女』より)に、たばこ屋を開いて移り住んだ。明治41年(1908)に母・志気は彫金師の上条松吉と結婚し、向島中ノ郷町32番地(現・向島三丁目 )に移り住む。その後、明治43年(1910)の大洪水で被害を受け、新小梅町(現・向島一丁目)へ転居。ここから牛嶋尋常小学校、府立第三中学校に通った。
 大正12年(1923)の関東大震災で母を亡くした後は、新小梅町8番地(現在の向島一丁目)の住居に養父・松吉とともに暮らし、結婚して軽井沢に赴く昭和13年(1938)までの約30年を向島の地で過ごした。
 同じく墨田区で育ち府立第三中学校の先輩でもある芥川龍之介を師と仰ぎ、多大な文学的影響を受けた。
 『幼年時代』や『花を持てる女』には、幼い頃に暮らした向島の風景が抒情的に描かれている。

参考文献

向島文学散歩(すみだ向島文学のまち実行委員会、2010)
墨田人物誌(墨田区区長室/編・発行、1982)
濹東の堀辰雄ーその生い立ちを探るー (谷田昌平/著、弥生書房、1997)
堀辰雄 Century books 人と作品 (清水書院、1969)

著作

堀辰雄全集  全8巻・別巻2巻(筑摩書房、1977-97)
堀辰雄作品集 全5巻(筑摩書房、1982)
風立ちぬ/菜穂子(小学館文庫、2013)

永井 荷風

永井荷風
画像は、『アサヒグラフ』 1952年11月12日号(朝日新聞社)より(パブリックドメイン)
生年:明治12年(1879)12月3日
没年:昭和34年(1959)4月30日
職業:小説家

プロフィール

 小石川区金富町(現・文京区春日)に生まれる。本名は壮吉。父・久一郎は官僚で漢詩人、母・恒(つね)は漢学者・鷲津毅堂(わしづきどう)の娘。19才のとき小説家・広津柳浪(ひろつりゅうろう)の門下となり、作品を発表し始める。明治36年(1903)アメリカに留学、ニューヨーク、ワシントンを経てフランスでも学ぶ。同41年(1908)帰国、『あめりか物語』を刊行。同43年(1910)慶應義塾大学の教授となり、『三田文学』を創刊。大正7年(1918)37歳のときに日記『断腸亭日乗』の執筆を開始、死の前日まで書き続ける。同9年(1920)麻布市兵衛町(現・港区六本木)に居宅を作り、「偏奇館(へんきかん)」と名付ける。昭和12年(1937)玉の井を舞台とした『濹東綺談』を発表。
 戦後は千葉県市川市に住み、『荷風全集』の編集や短編作品の執筆を行った。昭和27年(1952)に文化勲章を受賞。

墨田区とのかかわり

 荷風とすみだのかかわりは、中学時代に始まる。大川(隅田川)端の水連場で泳ぎを習ったりボートを漕いだりしたことを、随筆『夏の町』の中で「最も愉快な記憶の一ツ」と振り返っており、これがのちの隅田川への愛着につながったとみられる。
 すみだの地が舞台の作品は、『寺じまの記』、『すみだ川』、戯曲『春情鳩の街』など多数あるが、最も有名なのが玉の井(現・東向島)を舞台にした『濹東綺談』である。昭和12年(1937)4月から『東京朝日新聞』で連載を開始したこの作品は、荷風自身がモデルとされる主人公と娼婦お雪の交情を描き、玉の井の地を一躍有名にした。

参考文献

永井荷風―断腸亭東京だより 生誕135年・没後55年―(河出書房新社、2014)
新潮日本文学アルバム23 永井荷風(新潮社、1985)
井荷風の愛した東京下町―荷風流独り歩きの楽しみ― (文芸散策の会/編、日本交通公社出版事業局、1996)

著作

荷風全集 全31巻・別巻(岩波書店、1963-2011)
濹東綺譚 改版(新潮社、2011)
永井荷風 1879-1959(筑摩書房、2008)

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