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2022年12月 タネの未来-僕が15歳でタネの会社を起業したわけ-

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タネの未来-僕が15歳でタネの会社を起業したわけ-

小林宙/著
家の光協会/2019.9



 「この本に2時間だけ貸してください!」「タネの話をするから聞いてほしい-。」と呼びかける著者の小林宙(そら)さんは、この本を書いた時高校2年生。
小さなころから植物のタネや木の実に魅かれていた宙さんは成長するにつれ、ホームセンターでタネを買ってもらい自分で作物を栽培し収穫する、タネに関する本を探して読むなどして、さらにその世界に分け入っていきました。
そしてタネというものこそ生きものの命を支えていること、そのタネが現在抱えている問題点に気付きます。

 みなさんは、米・野菜・果物といった作物のタネに固定種、F1品種、GM品種といった品種の違いがあることを知っていますか?
 固定種は、おいしかったり丈夫だったりする良くできた作物から採取したタネを植え、育った作物からまたタネを採るということを繰り返し、良質な特性を固定したタネのことです。
誰もにできる品種改良であり、地域の伝統野菜は多くがこうして作られてきました。
 F1品種は、二つの異なる固定種を掛け合わせて作ったタネ。F1品種のタネからは均一な形や味の作物ができますが、この作物からとれるタネには良い特性が安定的に受け継がれず、農家は毎年種苗メーカーから新しいタネを買っています。
 そして三番目の品種、GM品種。遺伝子組み換えされたタネで、主に化学系の多国籍企業が開発しています。除草剤耐性や病害虫耐性、栄養強化などの利点を持ちますが採れたタネでの二次栽培が禁止されるなど開発会社の特許権が守られています。

 以上の3種類のタネのいずれにも利点があるといえますが、農家が農作業の利便性や収穫の安定性によりF1品種やGM品種を選択していくうちに在来の伝統野菜はどんどんその数を減らしているという現状があります。タネをめぐる法律にも世界的にその方向性を進めていく傾向が見られます。
 タネの種類の多様性が失われ種類が絞られていくことは、気候変動や作物の病害、戦争などの異変があったときに収穫が一気になくなり、栽培するタネが不足する事態が起こりうるということ。そう感じた宙さんは、今あるタネを守るために自分ができることはないかと考え、中学3年生の時に家族の協力を得て伝統野菜のタネの会社を起業するに至ります。

 この本を宙さんは「どの本よりもやさしくタネのことを学べる」ようにと書いています。私たちの命を支えるタネについて、あなたも学んでみませんか?
 また、読んでいくと彼がものごとに対し偏った見方をしないように気をつけ、情報については簡単に判断せず、深く考えたり感じたりするプロセスを大事にしていることがわかります。
自分のやりたいことを実現していくためにした具体的な計画や人脈を作るための心がけなども書いてあるので、これから自分の道をどう進んでいこうかと考えているティーンズにオススメしたい一冊です。



 そしてこの本を読んで、もしタネに興味が湧いたらこちらの本もどうぞ!


種から種へ命つながるお野菜の一生

鈴木純/文・写真 雷鳥社/2021


菜の辞典

長井史枝/テキスト 川副美紀/イラスト 雷鳥社/2019 


二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野菜

木村正典/著 naggy/イラスト G.B./2014